粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

282.深い学びを育む3つの資質 その3

次に注目したいのが、新しい指導要領の判断力の記述の中に「選択・判断」という言葉が加えられたことです。

(ちなみに、判断力が指導要領に記述されたのもこれ初めてです。)

 

 これまで、指導要領の文言が改訂されるたびに変化してきたが、長年社会科の目標を端的に述べると「社会認識を通して、公民的資質の基礎を育成する」とされてきました。

前段の社会認識は「知識」と密接に関係していて、社会事象への知識を子どもたちに身に付けさせることだなあと誰もが想像しやすいのではないでしょうか。

 

その反面、後半の「公民的資質」となると「社会に出て役立つ力のことなのか?」などと、なんのことだか想像しにくいのではないでしょうか。

 

しかし、今回の新しい学習指導要領ではその手掛かりが明確になったのではないかと考えています。

それは、判断力の記述にあるように

「社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力」

が一つの答えだと思えるからです。

 

 今ある社会の課題を把握して学び、その成果を生かして、

将来に向けてどのようにしたらよいのか考えていくことが、

公民的資質の基礎ではないでしょうか。

知識を持っているだけでなく、いかに実際の社会に生かしていくか。

そのために、子どもたち一人一人が知識を生かして判断することができるのかを授業の中で行っていく必要があると考えられます。

 

ですから、深い学びを実現するためには、

授業において、

子どもたち一人一人が、どうしたらよいのか「選択・判断」する場面が必要になるのではないでしょうか。

深い学びの実現 その②

子どもたちひとりひとりに、選択・判断する場面のある授業

 

 続く

 

徒然

・1年生の担任になりました。小学校生活を楽しみにしていたことがよくわかる子供達。みんな一生懸命生活しています。彼らの期待に応えれれるように、決意を新たにしました。社会科はないけど、それにつながる生活科。楽しみだなあ。

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自分で作ったステーキ。必殺のANOVAで調理。誰でもプロの美味しさ❓

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281.深い学びが育む3つの資質 その2

②思考力・判断力・表現力

 思考力・判断力・表現力は知識とは違い、子どもたちが身についたかどうか見極めるのが難しい資質だと思います。

 紙面で行うテストではなかなか図ることが難しいですよね。

しかし、新しい指導要領では、思考力や判断力について、かなり詳しく書かれていて、 資質や能力がかなりわかりやすくなっています。

 そして、思考力や判断力を育てる授業づくりをイメージしやすいと感じています。

思考力=社会的事象の特色や相互の関連、意味を多角的に考える力

判断力=社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力

表現力=選択・判断したことを表現する力

 

 

どうでしょうか。これならば、記述のテストやノートでも評価できそうですよね。

しっかりと基準を設けて、それに沿って評価できそうです。

 

また、思考力や判断力を育てるための、授業もイメージできます。 

私は思考力や判断力を育てる授業を考えるときに、

特に、思考力の記述の中に「多角的」という言葉と、

判断力の記された「選択・判断する力」が加えられたことが、

授業改善の視点である「深い学び」を実現する具体的方法の一つだと考えています。

 

 以前も書きましたが、

社会科にこだわりを持って実践されたり、研究されたりしている先生方に「多角的とは何ですか?」と問うと、

「多角的とは立場複数」だと解釈する人が多いと思います。

多角的と同じような言葉に多面的がありますが、

こちらは、中学校以上の学習指導要領に出てきます。

すなわち、多角的とは、一つの社会事象を2人以上の異なる立場から考えることを指しています。

多面的な見方だと、一つの社会事象を経済面や環境面から考えるということになるから、小学生の子どもたちには少し難しいのかもしれませんね。

しかし、多角的ならば、人によりそうことになります。

例えば、自然災害の単元ならば、市役所の立場や住民の立場、住民の中でも足の不自由な人の立場などが挙げられます。

災害を複数の人の立場で考ええることで、実社会の課題を見出し、学習を深めることにつながると思います。

 

また、「○〇さんはこう考えている」「□□さんは、こう思って行動している」と具体的な人物の立場になって考えることで親しみも生じます。

人に寄り添うことで、子どもたちは心を動かされ、自分のことのように考えることができるのもよい点でしょうね。

人の立場に立つのはことの良さは知識面だけでなく子どもたちの情意面にも響くからではないでしょうか。

 

だから私は、この「多角的」が「深い学び」の実現の一つのキーワードになると考えている。

深い学びの実現 その①

        2人以上の立場に立った、多角的な思考を促す授業

 

続く

 

徒然

・先日、書店ぷらぷらしていたら、ダン・ブラウンの「オリジン」の文庫版が出ていて、まとめ買い。あまり小説読みませんが、ダヴィンチコード、天使と悪魔、ロスト新ビル、インフェルノと呼んできたから購入。一気読み。展開は似ているけど、それもなじみで良い感じでした。ロバートラングドン教授かっこよい。トムハンクスは大好きですが、ラングドンのイメージとは違う気がするな。

 

・下は、朝日新聞に載っていたもの。JMMINという京都のTシャツ・パーカー等を売っているお店のもの。これを買うと様々な社会問題に取り組む団体に売り上げの一部が送られる。送付団体は毎週変わるらしいので、自分が共感できたりする団体へも寄付ができます。

これまで、このような寄付ものはデザイン的に・・・ということが多かったのですが、JMMINはその点を踏まえて、デザインにはぬかかりなし。サイトを見みてみてください。

今回は、季節の変わり目だったので、パーカー欲しかったからちょうどよい。夏になったらTシャツ1枚買おっかなと。無理なくできることを少しずつ。

 

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280.卒業式の板書

先日、卒業式がありました。

3年間一緒に過ごした子供達とのお別れの日は、成長の喜びを感じる1日ですし、

6年間の小学校生活を無事に終える素晴らしい日であります。

しかし、同時に、3年間当たり前のように過ごしてきた毎日が、もう繰り返すことがないのかと思うと寂しさもあります。

 

私のクラスの学級通信は「ぱれっと」という名前です。

一人一人のよい色(個性)が混ざり合って、素晴らしい色(学級)にしようという思いを込めて名づけました。

少しずつ学級の力を高めて、卒業の日に向かって成長して行こうと。

子供達の中にも、それを意識していて、日記の中で、嬉しい日や何かを達成した日には「きれいな色」と記し、そうでない日には「よい色にしなくては」というようなことも書かれていました。

卒業の日には、素晴らしい色になっているといいなあという願いも持つ子供達も少なくありませんでした。

 

さて、卒業式の日の黒板は、悩んだ結果、下のようにしました。

 

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社会科の授業のように、学習問題「私たちのパレットは何色になったの❓」

それに対する考えは、

本当は子供達に言ってもらえたらよかったのですが、

この日は時間がないので、こんな意見が出るのかなあという予想を。

そして、最後の結論は「これからも、それぞれの道で追い求めていくもの」としました。

 

そして、黒板の写真は、これまでの社会科で学んできた人に登場してもらいました。

 

そして、この写真には

ちょっとした工夫もあって、

 

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写真をめくると

 

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その人物の言葉が記されています。

もう一人示すと、

 

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こんな感じです。

全員の写真にその人の言葉を書きました。

 

大切な子供達の門出、を祝うには、スピーチが下手な私一人では荷が重いので、

これまで登場してきた人々のお手伝い願いました。

 

このようにして、卒業式の1日はあっという間に過ぎてしまいました。

今は、ぽっかりと空白ができた感じです。

 

卒業した皆さんの、健やかな成長と活躍を祈ってやみません。

3年間、ありがとうございました。

 

 

 

徒然

・改めて数えると卒業生を送り出すのは9回目。最初の卒業生は31歳になるのかな。みんな元気にしていますか❓

・来年度の授業も考えていかないと。頑張ります。

 

 

 

 

 

 

279.深い学びが目指す3つの資質 その①

前回の続きです。

 

では、授業改善の視点である「深い学び」が目ざす、3つの資質とはどのようなものか詳しく考えていきましょう。目指すゴールをはっきりさせれば、「深い学び」をどのように授業で実践していけば良いか明らかになっていくと考えれます。ゴールは何かはっきりさせるために、3つの資質を読み解いていきたいと思います。

 

深い学びが目ざすゴール「3つの資質・能力」とは何か?

①知識及び技能

 知識及び技能は、社会科の学習内容と密接に関係しています。すなわち、社会科とは何を学ぶ教科なのか、どのような内容を学ぶのかということです。

「社会科って何を学ぶんですか?」と問われたら、何と答えるでしょうか。

 国語科なら読む力、書く力、言語の法則を学ぶと答えるのでしょうか。算数なら数量や図形の数理的な処理仕方を学ぶこととこたえるかもしれません。教科の内容を想像しやすいと思います。しかし社会科はどうでしょうか。

6年生なら歴史、5年生の国土の学習の部分ならば地理という親学問がはっきりしているので答えやすいと思います。しかし、3年生や4年生、5年生でも災害や情報となると、何の分野を学んでいるのかわかりにくいのです。

 しかし、新しい学習指導要領では、社会科の内容をはっきりと3つに分類しています。それが、「地域や我が国の国土の地理的環境についての知識」「地域や我が国の歴史や伝統と文化についての知識」「現代社会の仕組みや働きについての知識」です。もう少しわかりやすく書くと「地理的」「歴史的」「公民的」な内容ということになるでしょうか。

 ここでは掲載は避けますが、「学習指導要領解説社会科編p150,151」に表として記載されていてわかりやすいので是非ご覧ください。

 例えば4年生の「自然災害」の単元だったら、「公民的」の重点が置かれていますが、「歴史的」な分野にも関わっていると図示されています。これは、現在や未来の災害対策を学びながらも、対策の方法を学習するにあたって、過去に地域で起こった災害なども調べていくからです。災害の学習であれば「公民的」な内容に加えて「歴史的」な内容を取り入れれば、学びが充実することになリマス。「深い学び」の実現の手がかりとなることでしょう。

 だから、授業を行うにあたっては、行う単元や授業が「地理的」「歴史的」「公民的」な3つの内容のどれに関わっているのか考えながら行っていけば、児童に新しい指導要領が求めている「知識」を身に付けさせることにぐっと近づくに違いありません。

授業の内容が(教材が)

「地理的」「歴史的」「公民的」な内容となっているか?

 

次回へ。

 

徒然

・今日は出勤。卒業近く、そのための準備を。寂しさ増してきていて困る。

イチロー選手引退。全く分野違えども、とても憧れ、目標であったのでとても残念です。好きなことをとことん貫く。職業上、私はまだまだこれからです。頑張るぞ。

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278.新しい学習指導要領と社会科の授業改善

平成29年3月に新しい学習指導要領が告示されました。

その中で、授業改善の視点として「主体的、対話的で深い学び」が示されています。

この「主体的・対話的で深い学び」については様々な意見を伺います。

 

例えば、極端な例を示すのですが、

 

「子どもたちが進んで学び、友達やゲストティーチャーと協力しながら学べば、深い学びになる」

「深い学びを実現するためには、主体的で対話的な授業を行う必要がある」

 

などと授業者によってイメージが異なるようです。

私も自分なりの「深い学び」について考え、実現に向けて日々実践を行っています。

今回は、私の考える「深い学び」の実現に向けての具体的な方法を書いていきたいと思います。

 

最初に「深い学び」とは何か❓

私の立場をなるべくはっきりさせようと思います。

 

では、新しい学習指導要領における「深い学び」と立ち位置をはっきりさせるために、学習指導要領を読み解いていきたいと思います。

 

 新しい学習指導要領では、児童に身に付けさせたい資質・能力がはっきりと書かれています。それは、「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の3つに分けらえれてい流のはご存知の通りです。

 

社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成すること

を目指す。

(1)地域や我が国の国土の地理的環境,現代社会の仕組みや働き,地域や我が国の歴史や伝統と文化を通して社会生活について理解するとともに,様々な資料や調査活動を通して情報を適切に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

(2)社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考えたり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断したりする力,考えたことや選択・判断したことを適切に表現する力を養う。

(3)社会的事象について,よりよい社会を考え主体的に問題解決しようとす

る態度を養うとともに,多角的な思考や理解を通して,地域社会に対する

誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚,我が国の国土と歴史に対する

愛情,我が国の将来を担う国民としての自覚,世界の国々の人々と共に生

きていくことの大切さについての自覚などを養う。

 

学習指導要領では

(1)が「知識及び技能」、

(2)が「思考力・判断力・表現力等」、

(3)が「主体的に学習に取り組む態度」として示されています。

 また、第4章の指導計画の作成上の配慮事項において、

「社会科の指導に当たっては(1)「知識及び技能」が習得されること、(2)思考力、判断力、表現力等」を育成すること、(3)学びに向かう人間性等」を涵養することが偏りなく実現されるよう、単元などの内容や時間のまとまりを見通しながら、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うことが重要である」と書かれています。

 

 以上の記述を素直に読むとすると、社会科授業は、子どもたちにこの3つの資質・能力を育成するために行われるべきものであり、「深い学び」とは、この3つの資質・能力を育成するための授業改善の視点であることを最初に抑える必要があると思います。

 

「深い学び」は、

子どもたちに3つの資質・能力を育成するための授業改善の視点である。

 

 

 

続く

 

徒然

・金曜日は、子供達と校外学習へ。

かなり大変な準備や片付けを自分たちだけで行いました。これまで、私と子供達で「自主自律」を心がけて過ごしてきました。

なるべく、自分たちで考えて、解決していくことや、多数決に頼り切らずに、話し合いで合意できるようにしてきました。時間はかかりましたが、今日のような姿を見ていると、頼もしさを感じました。

係りの者が作ったプリントにはないものを持ってきて、スムーズに進めようとする仲間や、率先して片付けをする姿など、

誰に言われるでもなく自分にできることを考えている様子を見ることができました。

少し言い過ぎでしょうが、自治の力の実践だなあと思いました。

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277.今日の読書と・・・。

今日も読書を。

「社会的共通資本」宇沢弘文 岩波新書

 

今日から読み始めたので、全部は読み終わりませんでしたが、

書き出しから惹きつけられます。

 

「ゆたかな社会とは、すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを十分に生かし、それぞれの持っている夢とアスピレーションが最大限実現できるような仕事にたずさわり、その私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触を持ち、文化的水準の高い一生を送ることができるような社会である。このような社会は、次の豊かな基本的諸条件を満たしていなければならない。

⑴美しい、豊かな自然環境が安定的、持続的に維持されている。

⑵快適で、清潔な生活を営むことができるよう住居と生活的、文化的環境が用意されている。

⑶すべての子どもたちが、それぞれの持っている多様な資質と能力をできるだけ伸ばし、発展させ、調和のとれた社会的人間として成長しうる学校教育制度が用意されている。

⑷疾病、傷害に際して、その時に置ける最高水準の医療サービスを受けることができる。

⑸様々な希少資源が、以上の目的を達成するために最も効率的、かつ衡平に配分されるような経済的、社会的制度が整備されていること」

 

社会科を意識したわけではなく、新聞の書評を見て以前買ったものです。

机に積んである未読本のところから持ってきて読み始めました。

 

期せずして社会科だなあ。

社会科授業では、こういうことを大切にしていき、こういうことを学べる教材の取材を重ねていけたらと思いました。さて、読み進めるのが楽しみな感じ。

また書こうと思います。

 

・・・・・・・・

 

それから、今日はあまりに幸福な一日で、

いただいたものを壁の一番大事なところに飾って、

それから別のいただいたものを何度も読み返してしまいました。

ありがたいことです。本当にありがたい。感謝申し上げます。

あと1週間になってしまったかと思うと辛くなってしまいます。

最後まで、一緒に走り抜けたいです。

 

徒然

初めて自分の乗っている電車が人身事故に。すごく驚きました。好奇心の強い方ですが、それよりも恐怖が優ってしまいました。

 

↓取材の思い出。

年の瀬、後藤新平記念館へ。水沢市東北本線を雪の中。自分の考えを学芸員さんに話してみる。貴重な資料もいただく。

教材前進した大切な1日。寒くも満たされた良い思い出。

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↓ANOVAで真空調理したあとオリーブオイルで炒める。意識高い系の食事❓(笑)

それにしても食べ過ぎだな。食欲旺盛すぎる。怖いくらいです。

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276.今日読んだ本

今日は、社会科授業のお話の題材に乏しく、今日読んだ本のお話を書こうかと。

本当は、毎日社会科のことを書くことで、

私自身にとって毎日の積み重ねになるのでしょうから、

書かなくてはいけないのだと思います。

もう少し、頑張らないといけないですね。

 

さて、今日は学校の先輩に夕食のお誘いを受けたので、

電車で通勤しました。電車で通勤すると30分強かかりますので、

往復で1時間以上の時間があって、読書に最適。

朝、家に積んである本の中から、読み終えそうな本をチョイスして電車に。

 

「一日一生」坂井雄哉(さかい ゆうさい) 朝日新書 を。

坂井さんは比叡山飯室谷不動堂長寿院住職で、約7年かけて4万キロ歩く(地球1周)「千日回峰行」を2回行い、大阿闍梨になった方です。この千日回峰行は、信長の比叡座焼き討ち以降、400年でわずか四十九人しかいないそうで、2回行ったのはわずか三人という偉業だそうです。坂井さんは、2013年になくなりました。とても残念ですね。

 

このような坂井さんですが、40歳までは職を転々とし、ようやくお寺に入り、自分の道を見つけたそうです。

ですから、人生の苦楽といいますか、酸いも甘いも味わった人柄が文章からにじみ出ています。

 

心に残った言葉を。

・生き仏なんて言われると、僕は気をつけないといけないなあと思う。たまたま比叡山にきて、比叡山に拾われて、比叡山で行をさせてもらったっていうだけのこと。1200年の歴史ある大きな舞台で行をさせてもらった。だからみんなからすごいと言われるんだ。普通に人と何も変わらないよ。だって、同じことをたった一人で名もない山でやったのだったら、そんなこと言われるかい❓みんなから「仏様」だなんて言われて、そうですかってふんぞり返っちゃったら、仏様は怒るよねえ。(中略)自分の地金は自分が一番よう分かっているでしょう。大事なのは、人からすごいと言われることじゃない。自分は金持ちでも貧乏でも、頭が良くても出来が悪くても、誰でもいつかは死ぬ。死んだら終わり。誰も変わらないんだ。大事なのは、今の自分の姿を自然にありのままに捉えて、命の続く限り、本当の自分の人生を生きることなんだな。

 

・自分なりに腑が落ちると、人はついそこで考えるのをやめにしちゃう。でも、答えがわからないといつまでも考えるだろう。肝心なのは答えを得ることじゃなく、考え続けることなんだな。

 

・天台では「教行一致」と言って、教えと行うことは一体にならなきゃだめなんだと説いている。知ることと実践すること、どちらも大事なんだ。孔子も「両輪のごとく」と言っているけれど、同じ轍では知らないと車が傾いてしまって走れないように、物事にはその2つの要素が必要なんだ。「俺は行をやった。もしも勉強もしていたら、相当優れた奴ができたんじゃないだろうか」って自分ながら時々悔しい時がある。どんなに勉強が嫌いでもやっぱり学ばなきゃだめだと、ただ学ぶだけではなく、自分でこなせるような学び方をしないといけない。

 

・幼い頃親が本気で心配してくれたり、おぶって病院まで走ってくれたり、そういうことは、いつまでも忘れないもんだな。ふれあいとか絆とか、肌の感覚でもって覚えているものなのかもしれない。

 

・子供にとっては、貧乏でもお金持ちでもいいんだよ。親が一生懸命生きている、その背中を見せてやることじゃないかな。

 

・たとえば僕は、82歳になる。じゃあ何日生きてきたのかなあと思ってね、この間計算してみたんだ。ようやく3万日をちょっと超えるくらいだった。80年だっていたって、たったの3万日っきゃ生きていないんだね。そう思うと、自分たちの命って、本当に短くて儚いものだなあと思うよね。地球が生まれて四十何億年とかって言うでしょう。なかなかイメージがわかないと方もないけど、その中の3万日なんていったら、霧や塵までもいかない、ふっと消えてしまいそうな微かなものだよね。そんな小さな存在なのに、こうして大きな世の中に送り出していただいたんだから、それこそ地球のために、みんなのためにって考えないといかんなって思うの。(中略)みんなが楽しく生きていく方法を考えたいなあと思うんだ。一つ一つの命は小さくても、みんなで心を一つにして考えることができたら、やがては大きな力になるんじゃないのかなあって。80年と言っても、地球の命に比べたらほんのはかないもの。80年生きたからどうの、これまで何をしてきましただのではなくて、大事なのは「いま」そして「これから」なんだ。いつだって「いま」何をしているか「これから」何をするかが大切なんだよ。

 

 

 

なんだか、社会科のようだなと感じるのは、私が社会科を好きだからでしょうか。

そうじゃなくて、仕事というものや、大げさに言ったら生きるということは、

どんな道を歩いても同じ道のり、同じ概念を学ぶということなのかもしれないと

ぼんやり考えながら、最後のページを閉じました。

 

↓取材の思い出。羽村の取水堰。夕暮れが美しい。思わず見とれていたなあ。

 

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