粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

9.どうして「さいち」は多店舗展開しないのか?

一日に最高25000個のおはぎを売ったこともある「さいち」。

子供たちは、「どうして、そんなに有名なのに、お店は普通なの?」「行列ができるほどなのに、どうしてお店を増やさないの?」とお店を大きくしないのか考えていきました。

 子供たちの予想は以下のようになっていきます。

・仙台以外では、人気が出なかったんじゃないかな。

・お惣菜もおはぎも手作りだから、作り人が違うと同じ味が出せないんじゃない?

・たくさん売ろうとすると、賞味期限を長くするでしょ。そうすると添加物を入れなくちゃならなくなるよ。

・添加物が入ったら、人気がなくなるよね。

・たくさん、売りたいっていう気持ちがないんじゃないか?

など、いろいろな意見が出てきます。子供たちが十分予想した後で、資料を提示します。

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資料

質問 どうして、たくさんお店を出さないのですか?

○現在スーパーは最低でも5店舗を経営しないと安定した利益が出ないといわれています。「さいち」も他に出店しませんか、おはぎをデパートで売りませんか、と言われましたが、すべてお断りしてきました。
○それは、「本物」を作っていきたいからです。本物は、添加物を使わない家庭の味です。だから、わたしたちの目の届く範囲で、しっかりやっていきたいのです。
○それに、たくさん作ろうとしてもできないのです。さいちの惣菜とおはぎには、紙に書かれたレシピがないのです。専務(澄子さん)と社員が毎日あれこれ工夫しながら作っていくのです。家庭料理が最大のライバルですから。家庭料理にもレシピはないと思います。心を込めて作りたいと思っています。
○もう一つは、ずっと私たちのお店を支えてくれた秋保の人たちのために働きたいからでもあります。秋保の人たちに恩返しがしたいといつも思っています。

質問 おはぎはずっと100円なんですか。値上げしても売れると思いますが?

○おはぎは始めたときから、ずっと100円(税別)です。材料費が上がってあげたいときもありますが、ずっとそのままです。
○値上げをしないのは地元に人びとの生活も苦しいからです。お客さんのことを見ていないと、お客さんにそっぽを向かれてしまいます。お客さんは神様です。言ってくれれば言ってくれるほどありがたいのです。お惣菜を買ってもらって、お客様にご意見をもらって、直していく。この繰り返しです。お総菜はお客様とのつながりを作ってくれます。お惣菜をお店でやっていてよかったといつも思っています。

質問「さいち」はお客さんを大切にしているのですね。

○お客様とのつながりは深いと思います。近くにコンビニやスーパーができると心配して逆に客足が伸びる。お客様が新しいお客様を連れてきて、商品の陳列棚で説明している姿も見られます。お客さんは神様ですね。わたしたちもお客様のために仕事をしていきたいと思います。
 商売は「人のため。社会のため。」だと思います。利益は後からついてくるのだと思います。
でも、私の店も利益を必ず出しますよ。従業員の生活もあります。

 

子供たちの感想

・お客さんのためのお店は少なく、お金をもうけようとするお店が多いと思います。ですが、さいちはお客さんのために働いています。きっと、お客さんと協力しあおうと思っているのです。苦しい人たちや秋保のお世話になっている人たちに、恩返しをしたり、助けたりしたいと思って36年間続けてきたんだと思います。だから、お客さんがたくさん来ます。自分でお客さんに思いやりを込めて、おもてなしし、お客さんにたくさん買ってもらおうと思っていると思います。
・お客も協力していると思いました。お客さんの声を聴いて、直して、どんどんおいしくなると思いました。私もさいちに行きたいです。
・わたしは佐藤さんは、田舎の一店舗で秋保の人たちに返していない恩返しをしたくて、お店をたくさん出さないんだと思います。私は秋保の人たちと佐藤さんは、お店を多くしたら、どこかで添加物を使うかもしれない。そうしたら、ちゃんと家庭の味を再現している秋保のさいちまで売れなくなってしまうかもしれないと思っているからだと思いました。

・さいちはお客さんのために、秋保のために恩返しをしたい。私も36年間支えてもらっているならば恩返しをしたくなる。でも、多店舗展開をしたくなるとも思う。そうしたらお金ももらえるのに。なのに、秋保のためにコツコツやっているのは、とても、これこそ、お客のためだと思いました。
・秋保の人に、佐藤さんたちは、いつか恩返しをしようと思っている気持がよく伝わってきました。僕も人のため、社会のために頑張りたいと思います。お店をたくさん出さないのは、佐藤さんたちの目の届くところ以外にお店を開くと添加物とか入ってしまうからだと思います。
・お客が新しいお客に説明するのがすごいと持った。後、逆に新しいスーパーなどができたら、お客が心配して、やってくるほど、そこのスーパーを信頼していると思った。さいちがお店をいっぱい増やさないのは恩返しをしたいからだと思った。
・他のお店の「お客のため」はそれはお金を稼ぐためだと思う。さいちの「お客さんのため」は本当だからも客さんも自分の知り合いにすすめたくなると思います。さいちの社員の人も、お客さんがほかの人にすすめているのを見ると、自分たちの作ったものでお客が安心してくれているとわかってうれしくなると思います。

 

子供たちは、佐藤さん夫妻の考え方を理解し始めてきました。(次回へ続く)