粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

11.「さいち」が広告を出さないのはなぜだろう?

この日は、「さいちが広告を出さないのはなぜか?」考えました。

子供は、さいちの学習を重ねてきたので、さいちがどのような考えでお店を営んでいるのか理解できるようになってきました。すると今まで全く外れていた予想が当たりだす喜びがあるのです。

子供の予想

・しょうひきげんがその日限りだから、出してもあまり意味がない。

・これ以上売れても、もう作れないから困るのでは。

・広告がなくても売れるように努力するという意味ではないか?

など、鋭い予想が飛び出します。

そして、ある児童が発言するのです。

「さいちの良さは、広告では伝わらないんじゃいかな。だから、広告を出さない」

なるほどと納得する仲間たち。

「どういうこと?」と問い返すと

・モニターでお客さんと店員を結んでいることややりがいを引き出すことって、広告には載せられないから。

・30年も3時に起きて作っていることも載せられないでしょ。

と発言します。「お客様のため」ということの重みを感じます。

さて、この日配った資料は以下の通りです。子供の予想も見事ですが、佐藤さん夫妻のものの考え方にはいつもながら驚かされます。

資料

f:id:syakaikajugyou:20160921071330j:plain

◎スーパー人気の秘密      
主婦の店「さいち」は安くないけどどうして?
インタビューした日 2015年6月20日と7月11日
答えてくれた人 佐藤啓二さん 澄子さん

質問 さいちのおはぎは、大きくて安いなあと思うんですが、他の商品は安くないようですが。
○実は、広告も出していないんですよ。
     えっ。広告も出さないんですか、なぜ?
○広告は、30年以上前は出していましたが、やめてしまいました。本当のことを言うと、商品の価格では大きなスーパーにはとても勝てません。仕入れる用が違うから、問屋さんやメーカーも大きなスーパーに安く卸してしまう。どうしても勝てないのです。
○だから、さいちの特徴に安さはありません。さいちの特徴は「人のため、社会のため。」です。

質問 お客さんは安い方がいいのではないですか?
○そうかもしれませんね。でも私はそうとは思いません。ワゴンにたくさん商品を置いて「安売り」というのがよくあります。お得だと書かれていると、お客様はつい買いたくなってしまう。でも、それは本当に必要な物でしょうか。実は、安売りはお客様にいらない物を買わせるということがよくあるんです。
それだけではなくて安売りは店員にとってもよくないことがあります。それは、安さで勝負しようと思うと「原価割れ」と言って、本当は100円で仕入れたのに、他店に負けないために90円で売ったりすることがあります。売れるたびに10円損をするんです。
店員もそれを知っていますから、90円で買っていった人に本当の感謝は生まれないです。でも、100円の物を110円で売るとしたらどうでしょうか。10円も余計にもらうのですから、10円分以上頑張って作ろうろうとか、親切に売ろうという気持ちになります。お客様も、必要な物やいい物を、気分良く買っていただけることがあります。

○広告を出さないのも同じです。30年前は私も広告を書いていましたが、値段を書くときに、見えてくるのは「お客様の顔」ではなくて「他のお店のこと」でした。一番大切にしなくてはならないお客様のことではなく、ライバル店のことばかりを気にしてしまう。負けてなるものかと。これでは、「人のため、社会のため」にはなりません。だから、思い切って広告をやめてしまいました。そうしたら、良いものを作ろう、お客様の要望に応えようとお客様と真剣に向き合えるようになりました。私は、問屋さんやメーカーさん、野菜を作っている人に、安くしてといって仕入れたことはないです。いいものを気持ちよく仕入れています。

 

子供の感想は以下の通りです。

・さいちがお客さんのことを考えているというのは、一生懸命作ることだと思う。さいちは、人のため、社会のための一つだけの(他とは違う)スーパーだと思います。
・さいちは商品価格では大きなスーパーには勝てない。だから、さいちの特徴は「人のため、社会のため」だ。安くしすぎても、原価割れを起こし、感謝の気持ちが生まれない。
・10円分がんばって作ろうとか、親切に売ろうという気持ちにとても感動した。さいちはとてもお客さんのことを、たくさん考えていて、さいちに行きたくなった。
・さいちは30年前にはチラシを書いていたけど、浮かんできたのはライバル店のことばかりだったので、思い切って止めてしまってすごいと思った。
・さいちは、都会のスーパーの大先輩ではないかという気がしてきた。
・さいちは最初は、なぜ安くしないのかと思っていたけれど、自分がさいちの社長さんの気持ちになると、広告を出さない理由が分かった。
・さいちは、人のため、社会のためと言っているけど、本当にそれを実行しているところがすごいと思いました。そういったスーパーだけが、お客さんに対して本当にありがとうと言う気持ちになるのだな。
・広告をやめるのに、人のため社会のため、そして、10円以上頑張ってつくろうとか、親切にしようという気持ちがすごい。

 

子供たちは、原価割れという言葉を初めて知り、安売りの仕組みや、いらない者も買ってしまうことを知りました。(次回へ)