粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

17.問題把握の場面②  「広さ」と「深さ」を意識して新聞を読ませる

前回は、

①23区に海水浴場があることの驚く。

②しかし、あまりきれいではない。「入りたくないな」

③「50年ぶりに復活」の看板を見る。

④50年ぶりに復活ってことは、それ以前はもっと汚れていたのか?

というように子供は考えていきました。

そこで、今回は、この海水浴場を報道した新聞記事を読んで、いったいこの海水浴場は何なのか事実に迫っていきます。

○新聞記事の要約

都内の東京湾で海水浴を復活させようと、認定NPO法人「ふるさと東京を考える実行委員会」が江戸川区葛西海浜公園で5日、1日限定の海水浴場を開いた。関係機関と協議し、水質検査をしてこの日だけ遊泳できる場所を設けた。約3千人が海遊びを楽しんだ。
 現在、23区内の東京湾には海水浴場がない。同委員会理事長で、江戸川区中葛西出身の関口雄三さん(64)は子どものころ、夏は近くの海で泳いで育った。「東京のふるさとの海で泳ぎ、生きものに触れ合ってもらいたい」と、海水浴場復活のための取り組みをしている。  署名活動や講演会のほか、ここ3年間は都港湾局と一緒に水質浄化のための取り組みをした。トゲが危険なエイの侵入防止ネットの設置を進め、地元の葛西中の生徒17人とゴミや石を拾い、環境を整備した。「東京湾での海水浴の第一歩になれば」と広さ約1万5千平方メートルの遊泳ゾーンを準備した。  この日は、すいか割りや地びき網体験などもあった。家族5人で千葉県市川市から来た藤谷富美江さん(34)は「遠くまで行くのは大変なので、東京で海水浴ができればうれしい」と話した。(朝日新聞 デジタル)

 

○東京都江戸川区にある葛西海浜公園「西なぎさ」において、7月18日から「海水浴社会実験」というイベントが始まり、期間と場所を限定しての海水浴が可能となりました。
東京都と連携してこのイベントを実施しているNPO法人ふるさと東京を考える実行委員会によると、東京湾の水質悪化によって50数年前から都内23区の海はすべて遊泳禁止となっていましたが、工場からの排水基準の強化や下水道の普及などによって水質が改善され、2013年から「顔をつけない」という条件のもと海水浴の許可がまず下り、ようやく今年から顔をつけて海水浴できる場所となったそうです。
ただし、現段階では正式な海水浴場としてのオープンではなく、海浜公園内の150メートル四方を遊泳可能とする「海水浴社会実験」であり、この実験によって利用者ニーズや安全状況などを確認し、本格的な海水浴利用のための検討材料とするようです。期間は2015年7月18日~8月30日までの土日とお盆(8日~16日)で、それ以外の日は遊泳禁止となり、今までどおり波打ち際での磯遊びのみが可能となります。(共同通信

 

これを読んで、

①重要なことに線を引かせます。

②隣の席の子供と、どこに線を引いたか話ます。線を引いた理由も言います。

③(場合によっては、教室を自由に動いていいから、聞きたいと思う児童のところに行ってもよいように言います)

④全体で、「記事から何が分かるか」話し合います。

②③をすると、の全体での話し合いの前に、「自分と同じ意見の子がいる」と自信を持てたり、「なるほど、そういうこともわかるのか」と気づかなかったこともわかります。全体の前に、隣や自由に交流させてしまうと、全部わかってしまうのではないかと思いがちですが、そうでもありません。

子供同士の交流では「広げる」ことはできても「深める」ことは難しいからです。

新聞記事の「ここにこんなことがある」「ここにも線が引ける」というように広げることは難しくありません。また、どこに線を引いてよいのかわからない児童(視点の持てない児童)のとっては、視点を獲得する機会になります。視点を獲得できれば、全員の前で手をあげることができるようになします。

しかし、「深める」のは難しいのです。子供同士ではなかなか「どうしてそこに線を引いたの」とか「僕と同じところに線を引いたけど、理由は違うのかな?」というように交流するのは難しいのです。しかし、このように交流できる力を育てていかなくてはいけません。このように、「相互に理由を問うて、深める」ことができれば、全体での話し合いも素晴らしいものになります。高学年ではぜひ求めていきたい力です。

しかし、今回は3年生です。「広げる」交流をして、全体で「深める」ことをしていきます。

○子供が線を引いいたところ

・3000人も来たんだ。

・関口さんが復活させた。

・「ふるさと東京を考える実行委員会」も活動したんだ。

・エイの予防など、安全に泳げるようにしたんだ。

・「海水浴社会実験」と書いてある。

・水質悪化が原因で、海水浴ができなくなったんだ。

です。子供の線を引いたところを話してもらいます。理由を問うてもいいでしょう。「どうして線を引いたのか理由も言えたら行ってください」と付け加えると、線を引いたところが同じでも、子供の活躍できる場面が増えますし、理由がしっかりしていたら「深める」ことにもつながります。

そこで、社会実験について意見が出てきました。「深まる」段階です。

・本当の海水浴場じゃないんだ。まだ、実験なんだね。

・うまくいけば、本当の海水浴場になるんだね。

・だから、前回の写真は水がきれいじゃなかったんだ。

・でも、前はもっと汚かったんだよ。「水質悪化が原因」と書いてある。

・水質悪化ってなんだ。

・水の汚れだよ。工場の排水とか。

・一番は生活排水だと聞いたことがある。

・生活排水って私たちにも原因があるってことでしょ。

・関口さんは、それをきれいにしているのかな?

・本当の海水浴場にしたいんでしょ。

・生き物に触れあってほしいと書いてあるよ。

・私たちのためっていうこと?

・どうして、活動を始めたのかな。

・関口さんに聞いてみたい。

 

子供は、関口さんに、どうして海水浴場を復活させたいのか聞いてみたくなりました。

社会の事象を見ていくと、その事実を支える人がいます。そして、人を学ぶことで、事象の意味を「深く」考えられるようになるのです。それは次回。

○授業後の感想

・海水浴社会実験で失敗してしまったらどうするんだろうと気になりました。でもまだ干潟のごみ拾いがあるということは、まだ結構汚れているのかなぁと考えました。早く関口さんに今の2つを聞いてみたいです。
・まだ濁っているから泳ぎたくはないけれど、ふるさと東京を考える実行委員会の人ががんばってきれいにしたら入ってみたいです。50年かけてきれいにするということは海があまりに汚すぎてやっと復活できたということなのか聞いてみたいです。
・僕が大人になったら、完全復活は果たされていると思います。僕たちがおじいさん、おばあさんになったころには、東京は最高の町になると思います。
・僕は東京に海水浴場が、葛西臨海公園にしかないと聞いてびっくりしました。なので、葛西臨海公園の海水浴場を大切にしてほしいです。なぜならつぶれたら、葛西の人も「ふるさと東京を考える実行委員会」の人もがっかりしてしまうからです。
・50年前からどんな努力をしてきたのか。現在は完全な復活のために、どんな努力をしているのかなどが気になりました。

・私は東京のふるさとで泳ぎ、生き物に触れあってもらいたいというところが、とても感動しました。私はなぜ一日しか開けなかったのか理由は2日開くと怪我をしてしまうかもしれないからだと思ったけど予想ははずれました。まだ2012年の時は少し汚いのに3000人も来てびっくりした。私は海を完ぺきに復活させるのは、みんなの力が必要だと思いました。
・2015年になって、顔にもつけてよいとなったので、泳ぎたくなりました。それに私は関口さんの「東京の故郷の海で泳ぎ、生き物に触れあってもらいたい」というのが心に残りました。
・どれくらい前から活動しているのか知りたいです。関口さんが子どもの頃はきれいだったから、やっぱり工場か発展のことをその時からみんなで考えていたんだと思います。自然を考える人は少なかったんだと思います。

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