粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

66. 東京都で唯一の村、檜原村 ~「檜原雅子」になった戸田雅子さん~ その⑧

「地域おこし協力隊」というヒントをつかんだ私でしたが、

実は、気づかないうちに檜原村の「地域おこし協力隊」の隊員の方の情報をつかんでいました。

前回の檜原村取材で第3セクターのスーパー「かあべえ」に行った際、そこに檜原村の案内フリーペーパーとして数種類ありました。その中に、「なんでもお手伝いいたします」という杉本さんという女性が村人に向けて書かれた案内がありました。私はボランティアの方かななどと思ってそのままになっていましたが、竹内先生のところから家に帰って改めてそのパンフレットを見ると杉本さんの肩書は、「地域おこし協力隊隊員」だったのです。

早速取材のお願いのお電話をさせていただきました。

杉本さんは快く引き受けてくださいました。冬季休業中にお会いすることができました。

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杉本さんは、品川区の生まれで、長年美容師として都内ではたらいていたそうです。

大きな美容室の店長を任されるなど、ご活躍をされていたのですが、旅行で北海道や沖縄に行くと、自然が豊かで、時間がゆったりと流れていることの魅力に気づき、長野県の白菜農家や、花屋さんに努めるようになったそうです。

そんな時、檜原村で「地域おこし協力隊」の募集があり、決心して応募し、見事に隊員として採用されたそうです。

以下、杉本さんのインタビュー

檜原村に来ると、村に人はウェルカムの雰囲気でした。人里(へんぼり)という地区に住みました。人里はもみじの里を目指している。スギやヒノキの人工林を切って、紅葉するもみじを植えている。自治会では年に2回物産展をやっている。今年で11年目。こんにゃく。うどん。つけもの。伝統芸能をしている地域は多いけど、こういう行事は少ないのです。夏には盆踊り。バス停の枝垂桜が美しいです。桜まつりや芋煮会も。ゲストハウスに来た学生が手伝いもします。地域の皆さんは団結して頑張っています。

 

私の方は、地域おこし協力隊の仕事は、畑の手伝い。美容カットをしています。地域おこし協力隊は役所に所属していいるので公平性が大切なのです。面白いだけとか、便利なだけでは済まないのです。私はこれまでの仕事から、接客は得意や声かけが得意なので、私にあった仕事を見つけていかなくてはいけません。

「地域おこし協力隊」の仕事は月から金の朝から夕方までです。ほかの仕事は勝手に仕事はできません。一部に人の手伝いばかりをしていてはいけないのです。バイトも禁止です。

3年後の独立が求められていますが、すべての収入を自分で得るまでになるのは大変です。

 

○今後についてはいかがですか。

なんらかの仕事には付けると思います。五日市にも通えるし。ただ、檜原に住めるかどうか。檜原で生活できる仕事があるかどうかは不安です。今借りている住宅は3年の期間が過ぎたら住めないのです。

近所付き合いがあるから、それから離れるのも寂しいのです。

檜原村は、手作りのものが残っています。みそ、漬物、おやき、うどん、そば。おばあちゃんたちが日常的に作っています。不便なところもありますが、だからこそ、残ったものがたくさんあります。獅子舞などの伝統芸能もそうです。もし、交通がよかったら開発されてしまっていたかもしれませんね。結果的に残った貴重な場所です。失ってほしくないものも多い。

檜原はいいところだけど、定住はできるかどうか。税金をもらっているのにうまくできないと責任を感じてしまいます。

 

たくさんのお話をしてくださいました。本やインターネットを見ると、地域おこし協力隊は全国で広がりを見せているものの、

課題として

①公平性を重んじるため、大胆な仕事がしづらい。

地方公共団体が、「地域おこし協力隊」の仕組みを理解しておらず、お手伝いのような仕事しかない。

③拘束時間長く、3年後の独立は難しい。

など、多くの課題があるようです。

私はこれらの記事と杉本さんのインタビューから、うまくいている「地域おこし協力隊」は受け入れる自治体そのものが地域おこしに対して、前向きであることが前提なのだと思いました。それがないと、何をしていいのかが分からず、隊員の方をお手伝いか何かに使ってしまうように思います。

地域おこし協力隊は国から多額の補助が出ていますので、過疎の自治体にとっては助けになるのですが、それを生かすには地域の主体性が大切なようです。

それは、この制度だけではありませんね。どんなことでも、主体性をもって取り組まなくてはいけません。「自治の精神」です。丁度同時並行で単元開発をしている「後藤新平」の学習と、掘り下げた底にあるものは同じなのだと思いました。

子供たちと「過疎」の問題を考えていくことの決心が固まりました。「過疎」という困難な状況を克服するための「地域おこし協力隊」。そして、そのせいこうにかかせない「自治の精神」。公民的資質の基礎を養う社会科教育にとって大切な学習内容です。光がさしてきました。(つづく)