粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

68.東京都で唯一の村、檜原村 ~「檜原雅子」になった戸田雅子さん~ その⑩

2月の公開も迫り、授業は予定通り進んでいました。

1月も押し詰まってきたある日。

最近、放課後に将棋好きの子供たちに相手をしてもらって、将棋を指しています。

将棋を本格的にやったことはなく、子供のころ祖父に教えてもらったけど、

あまりはまらず、たまにクラスの友達と指していたくらいです。

そんな私でしたが、学級がなんとなく、将棋を指すムードになって「放課後将棋倶楽部」ができたのです。

中にはとても強い(私と比べて)子供もいて、最初に1回勝ってからずっと連敗してしまいました。将棋の本を立ち読みして、形(定跡)を学んだりして対抗するのですが、子供たちの方がその先をいっているのでなかなか追いつけません。そうこうしているうちに、不思議と新聞で将棋の記事に目が留まったり、インターネットで検索してみたりしている自分に気づきました。

そういう情報の中で、何やら佐藤天彦名人への挑戦権を決めるA級順位戦が佳境に入っているとのこと。A級は10人の総当たりリーグで、1位の成績が名人挑戦権を得られるとのことです。現在1位は稲葉8段で、7戦全勝。羽生3冠らが追う展開。残り2戦は全員が同時に将棋会館で指すということでした。ファン注目の時期だそうです。

将棋の観戦なんてしたこともなかったのに、何事も経験と考えている私は、フラフラっと将棋会館へ行ってしまいました。

すると大勢の人であふれ、大盤解説も(木村8段だったかな)面白く、(授業に役立ちそうな軽妙さ)ついつい長居してしまいました。その時印象に残っているのは、佐藤康光さんの奇想天外なすごさ。解説の木村八段が「わからない手だなあ。この人将棋知っているんですかね」などとふざけて、観戦者の笑いを誘っていたけど、時間の経過とともにみるみるよくなって勝勢になっていく。将棋って展開もいろいろで面白いなあ。

将棋の終局は夜中になるのが常で、時には翌日になることもあるそうです。そういう場合は対局者も観戦者も電車がなくなって帰れないので、近くで飲み明かすこともあるということもそこで知りました。なんだがすごい世界です。知らない世界というのはたくさんあるもので、興味深くすごしていました。

そんな時、携帯の電話が鳴りました。着信番号は見覚えがない。

こんな時間にだれだろうと電話にでると、

「粕谷先生ですか?」という聞き覚えのない女性の声。

「はい。そうですが」と返すと、

戸田さんだという。

全く覚えの名に私。

「ひのはらで紅茶を作っている戸田ですけど・・・。」

あっ。檜原雅子さんのことか!

あの「開拓団」の男性はしっかり伝えていてくれたのか?

戸田さんは、とても丁寧で明るい方でした。

元高校の先生で、お話も上手。

とんとん拍子で話が進み、週末にお会いすることになりました。

あきらめかけていたのに、幸運だな!

しかし、公開研究会まで1週間程度しかありません。

戸田さんにお会いできるのはうれしいし、きっと私の興味関心に沿ったものだと思うのですが、今から戸田さんのことを学習に取り入れるとなると授業展開の訂正や取材、資料作りなどなど・・・・・これからえらいい時間を過ごすことになるぁ。

でも、最後までよい授業にしていきたいから、気合を入れて頑張ろうと決めました。

そう覚悟すると「もう将棋はいいや。」という気持ちになって、

足早に将棋会館を後にするのでした。(続く)