粕谷昌良の社会科授業日記

筑波大学附属小学校の粕谷昌良が社会科実践を報告します。

156.それぞれの限界を知る。「まかせっきりはいけない」

5人の専門家から、鴨川市で起こるであろう津波について学びました。

子どもたちは、かなり多くの知識を得ることができました。

では、どうしたらよいのか?防災計画を立てることにしました。


そのヒントは「釜石の奇跡」でした。(釜石の事実とも)

釜石の奇跡と呼ばれると鵜住居小、釜石東中の「率先した避難者たれ」のように、

自分たちで、よりよい方法を考えて津波に備えることを考えました。

 

児童は専門家の話から,科学的な視点,歴史的な視点,行政からの視点,学校での視点で地震津波対策をとらえ,それぞれの役割の大切さを知ることができました。

しかし同時に、それぞれの限界を知ることができたのも大きな収穫です。

全てを大人たち、市や学校に、任せておくことはできない。それぞれが精いっぱいやっても、届かないところがある。結局は自分で判断するしかないと強く感じることができました。

 

それぞれの役割の限界を踏まえた上で,児童一人一人が,自分の考えを整理したり,望ましい防災対策を選んで判断したりすることにしました。

そして、クラスで議論の場を設け,自分とは違う他者の考え方を聞いて,自分の判断を修正し,望ましい津波対策をまとめていきました。

 

これが一応の社会的な合意形成となるわけですが,ここでの話し合いは児童の津波対策は,授業前のただ恐れている段階から,自分なりに根拠を持って判断する段階へ,そして,他者の話を取り入れ多くの人の合意が得られるより社会的な判断を出来る段階へと引き上げられていきました。

下は、当時私がクラスで話し合いを行った時の児童の分析を書いたものです。

 

B児は明るく活動的だが,学習は苦手で人前で表現することは苦手な女子である。彼女の家は,前原海岸近くの戸建て住宅で,学習以前から家族で避難場所を話し合っていた。彼女は,市の防災課のT先生の話で堤防が津波用ではないことを知り危機感を強めていった。また,行政は震災直後には動きたくてもすぐに動けないことを知り,公助の限界を強く意識して学習を進めていた。そのため,学校の防災対策を学習したときも,備蓄の少なさを気にかけ,もし3階まで浸水したときに市と連携がとれなくなる事を強く心配するなど,どこか公助のあり方に不足や不安を感じながら学習していた。そのため,コンセンサスでは「公助には限界がある」との立場をとり,一人一人の意識を高めることを主張した。しかし一方で,「公助の限界」という言葉をクラスのコンセンサスで使おうとしたとき,「自助の充実」にしようと言い出したのも彼女でもある。理由は「公助もがんばっているが,出来ないこともある。公助の限界では失礼だから。」であり市の対策を評価している面もある。その提案は全員の支持を得て受け入れられた。だから防災フェスタでは,市のとりくみを紹介し,市の工夫を紹介する役割を希望して津波避難ビルを紹介した。それに加え,「自助の充実」を言葉で添えた。また,クラスのコンセンサスに対する話し合い後には,避難訓練や情報の大切さにも理解を示し,認識を広げることもできた。
読書好きの男子Cは,避難訓練について懐疑的であり,避難訓練が実際に機能するかをもとに考えて学習し,全国の防災訓練を調べて訓練の効果とあり方を報告した。防災フェスタでは,橋の耐震補強の現実の話を聞き,簡単には解決できない難しい問題があることを知り,認識を深めることができた。その後,避難経路について考え直すなど,判断も修正した。
他にも,常に前向きでクラスの友達からの信頼の厚い女子Aは自分の家が前原海岸に面するマンションという立地から,強い関心を持って学習を進めていた。彼女は,市の防災課滝口先生の話を聞いた後は,一貫して「自助」の大切さを問題の中心として学習を進めていた。だから,地学のT先生の話では,津波の速度から「予め逃げる場所を決めておかなければ助からない」と考えた。さらに,元禄津波の説話では,夜間で混乱して逃げられなかった話に強い共感を示し,事前の準備が大切だと考えるに至った。そこで,クラスのコンセンサス直前に,彼女の呼びかけで,自分の家の防災リュックを見直し,夜間の場合や家族が別々の場所にいるときの避難のきまりを話し合うなど具体的な行動に示すまでになった。最終回の防災フェスタでは,自分の家族での話し合いの経験をもとに,家庭で備えておくべき物や場所を津波の速さや夜間の事例を踏まえて報告した。彼女は行動や生活意識にも変化が現れ,人前に出ることが必ずしも得意でないにもかかわらず,防災フェスタの開催に際して進んで司会を行うなど,主体的に社会参画することができた。このように,同じ学習展開で進めても,生活歴や生活状況などに応じて,一人一人の興味関心や課題意識に差異があることがわかる。
児童の記述やインタビューから検討すると,今回のコンセンサス会議の手法では,児童は学習展開による画一的な社会認識の変容だけでなく,個人の興味や関心によっても学習内容の視点の当て方が違うことがわかった。すなわち,授業者が意図する学習展開に加えて,児童一人一人の問題意識に裏付けられた認識の深まりや責任が少しずつ育成され,児童の主体性が高まって「子どもが創る 防災フェスタ」の開催に至った。


さて、上の文章の中に、「防災フェスタ」というものがあるが、それは何でしょうか。

それは、児童が考えた防災案を発表するとともに、多くの市民から意見をもらう場でした。

その開催については、いろいろな準備があったのですが、(楽しくも、苦しみもありの準備)それは次回にします。

 

釜石の奇跡の事例を参考にどうしたらいいのかクラスで話し合い。防災課のT課長も意見をくれました↓ 

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